第19章 不言色(いわぬいろ)
「へえ…彼女が欲しくないって…珍しいね」
「そう?」
「だっていつも結婚したい、早く子供欲しいって言ってるじゃん」
「…まあ、それはね。そうなんだけどね…」
「誰か他にいい子でも居るの?」
「…いや、別に?」
「なに、その間」
「なんだよ…考えてただけだろ」
「へえ…少なくとも考えるような人が、頭のなかに居るってことだね?」
いつもながら潤の勘は鋭い。
だけど間違ってる。
頭のなかに居るのは…
「それ、俺も聞きたいな」
いつの間にかニノが俺の後ろに立っていた。
「え…?」
「翔さんの頭の中にいる人って、どんな子なの?」
ふんわりと俺を後ろから羽交い絞めにした。
「言うまで離さない」
「ちょ…やめろよ」
「じゃあ聞かせてよ?若い子なの?芸能人?」
「違うって…」
「じゃあ一般人なんだ」
「だからそうじゃないって」
ぐいっとニノの腕に力が入った。
「じゃあ誰なんだよ?」
「ニノ…」
「おい…カズ、なにムキになってんだよ…」
潤が間に入ってくれた。
少しの間があって、ニノの腕が離れていった。