第19章 不言色(いわぬいろ)
日々は転がっていく。
あれからニノの言葉は、相変わらず俺の中に住んで居た。
なんであんな夢をみたのか、わからなかったからだ。
俺はニノに殺して欲しいのだろうか。
だとしたら、なんで殺して欲しいのだろう。
答えが出ないまま、日々は過ぎていった。
「なに?」
「え?」
「俺の顔になんかついてる?」
局の食堂で飯を食っていたら、ニノに不思議そうな顔をされた。
「いや…別に」
いつもの癖がでてしまった。
あの日から、俺は隙を見てはニノの姿を見ていることが増えた。
自分の中でなんの答えも出ないあの夢の意味を、ニノの中に求めていたのかもしれない。
「目と鼻と口がついてる」
「もう一個忘れてる」
「…なんだよ」
「まゆげ」
「あほ…」
笑いながらニノはラーメンを啜っている。
いつもラーメンばかり食っている。
栄養が偏るんじゃないかと心配になるけど、そんなこと言えなかった。
なぜだか言わせない雰囲気がニノにはあった。
相変わらず猫背で、姿勢が悪い。
「よ、お邪魔」
雅紀がトレーを持って隣に座った。