第3章 萌葱-moegi-
タレントクロークで、楽屋から出てくるのを待ってる。
たくさん並んだソファーに埋もれながら、楽屋からの出口を注意して見てる。
いつからこんなことするようになったのかな…
これじゃストーカーだ。
ここでいつも偶然を装って待ちぶせして、一緒に帰るんだ。
あっちは免許がないから、いつも事務所の車で帰ってる。
俺はいつも自分の車だから、送って帰るっていえば、ホイホイついてくるんだ。
そう。
ホイホイとね。
俺のこと、まったく警戒してないんだ。
わかってるよ?そんな対象にみられてないことぐらい。
だって、俺は男であの人も男で。
ゲイでもない限り、そんな対象になることなんて、ないよね。
俺はゲイじゃないよ?
あの人だから好きなんだ。
あの人じゃないと、だめなんだから。
いいんだ。
ずっとこんな関係だったから、これからもこんな関係で。
せめて少しでも長く一緒に居たいって思ったってバチはあたんないでしょ。
芸能人オーラを消しまくってるのに、たくさんの人に囲まれた、背が小さいのに猫背の男。
その男を中心にした一団が出てきた。
キャップを目深にかぶって、周りの世界を全部拒絶してるようにも見える。
「リーダー」
声をかけると、ツバの下から俺を見上げる目。
優しい目。
「相葉ちゃん」
そういうと、にっこり微笑んで俺の心を鷲掴みにした。