第17章 ショコラ scene2
「ああ!でかけたいのか!」
智くんがいうと、雅紀の顔がぱーっと明るくなった。
「いやいやいや…先生に視てもらわないと…」
「もうすぐ戻りますから…あ、ちょっと待っててくださいね」
奥様はパタパタとスリッパの音を立てて客間を出て行った。
「智くん、他になんか言ってないの?黒…」
「んー?」
雅紀の顔をじっと見ると、智くんは顔を横に振った。
「こいつね”遊びたい”しか言わないの」
「遊びたい、ね…」
昨日から遊んでるのに、なんで雅紀から出て行かないんだろ。
なにが足りないんだろ…
「やあ!すいません、お待たせしましたな」
先生が客間に入ってきた。
スーツ姿で、ジャケットを脱ぎながら椅子に座った。
奥様が後ろでコートとハットを持っている。
ジャケットを受け取ると、客間から出て行った。
先生はアームバンドを緩めながら、智くんを見た。
「ははあ…あなたが噂の大野さんですな」
「あ、ども」
ぺこりと智くんは頭を下げた。
「はじめまして。行長と申します。よろしくおねがいします」
そう言って右手を差し出した。
智くんも右手を出して握手をした。
てへっと笑って二人はイスに腰掛けた。