第17章 ショコラ scene2
奥様に毛布を持ってくるよう言うと、俺に向き直った。
「櫻井さん。やはりこの子はなにかやりたいことがあるようです」
「やりたいこと…」
前の本物さんは、心中相手ともう一度契るために彷徨っていた。
じゃあ、この犬は…?
「それをやったら多分、相葉さんから出て行くと思います」
「成仏するってことですね」
「やはり自分以外の霊魂が身体に入っているのは、あまりよろしくない状態です。早くそれを突き止めて、相葉さんを楽にしてあげましょう」
そう言われても、俺、視えないし…
「やりたいことができてないから、まだ雅紀の身体から出て行きたくなくて、ここに来たくなかったってことですよね?」
「そうでしょう」
「そしたらこれからここに通うのも、嫌がりますよね…時間が経てば経つほど」
「櫻井さん、わかってらっしゃる」
長く身体に留まると、だんだんシンクロ率が上がって、雅紀までほんとに犬になってしまう。
早く突き止めないと…
「相葉さんと一番一緒に時間を過ごしているのは、恋人であるあなたです。だから、相葉さんと色々話をしてみてください」
恋人…
改めて他人から言われると、これほど照れる言葉はない。
その時、雅紀が寝返りをうった。
きゅうんと鳴いた。