第17章 ショコラ scene2
先生と俺は目を合わせた。
「あそこで処刑された人たちはね、本当に罪があったのかな…」
「え?だって、悪い人たちだから死刑になったんじゃないんですか?」
「その”悪い人”って決めるにはさ、基準が必要じゃん?でもあの時絞首刑にされた人たちは、あの時の日本で正しいことをしてたんだと思うよ」
「ん~?わかんないよお…翔ちゃん…」
「戦争で負けたじゃん。でも絞首刑しようって決めたのは戦争に勝った国の人たちだったってこと」
「増々わかんないよおおお!」
「うん…どうしようかなぁ…」
困っていると先生が懐から手を出した。
「つまりね相葉さん。あの石碑はあそこに漂ってる人たちにとっては、意味のないものなんです。だから悲しくなったんだと思いますよ?」
「あ…そうなんですね…」
お前本当にわかったのかよ…
「さ、相葉さん。視ましょうか」
先生はにっこりと笑った。
俺はまた隣の座敷へと移って、雅紀を待った。
奥様がまたお茶を出してくださった。
「今回のはでも、また違う意味で厄介でしょうねえ…」
「と、いいますと…」
「だって言葉が通じないんだもん…」
…それは盲点だった。