第17章 ショコラ scene2
深夜になって雅紀は家に帰ってきた。
玄関まで迎えに出た俺を見て、雅紀は上目遣いで俺を見上げた。
「ごめん…翔ちゃん…」
まるで頭の上に耳が付いていたら、ペタンと垂れていそうな風情だ。
「今までどこ行ってたの…」
溜息を付きながら言うと、雅紀は縋るような目をした。
「ごめんねっ…ごめんっ…」
「いやだから、どこ行って…うわあっ…」
いきなり雅紀は俺に飛びついてきた。
勢いで後ろにバタンと倒れこむ。
倒れた俺にのしかかってきて、胸板にゴシゴシ顔をこすりつけると、俺の顔を見つめて切ない顔をした。
「俺、なんにも憑いてないよぉ…」
いや、今。
完璧、お前犬だから…
「ん…わかったから、ね?先生、心配してたよ?」
頭を撫でてやると、雅紀は気持ちよさそうに目を閉じた。
「うん…でも、憑いてないんだから、先生には会わなくていいよね?」
「雅紀…」
思わず眉間にしわを寄せて言うと、雅紀が俺の顔を見た。
「ごめぇん…」
また雅紀は俺の胸板に顔を擦りつける。
「おいっ…俺は電信柱じゃねえんだぞ!マーキングするな!」
「へ?何いってんの?」
「あ…」
言えない…今、お前に取り憑いてるの、犬の霊だぞって…言えない…