第17章 ショコラ scene2
自宅に入ると、先生は妙な顔をした。
「どうかしましたか?」
「いえ…」
煮え切らない感じで、先生は部屋に上がっていく。
「申し訳ない。相葉さんの物を持ってきて頂けますか?」
リビングに入ると、ソファを見ながら先生が俺に指示を出す。
いくつか雅紀のものを見繕って持って行くと、先生は早速それを手に取った。
しばらく先生の眉間に皺が寄っていた。
邪魔してはいけないと思って、俺は息も碌にできずにいた。
「…櫻井さん…」
「はい、なんでしょう」
「今回も厄介です」
「ええ!?」
前回の本物さんは、江戸時代の大阪の遊郭の女性だった。
心中相手と契ることだけを願って、ずっとさまよい続けていた女性が雅紀に憑いていたのだ。
雅紀に憑いたところで男性と契ることは、雅紀が男だから難しく、また本物さんの執念が強いことから困難な除霊になると先生は判断していた。
しかし…俺と雅紀がヤってしまったから、スピード解決しちゃったんだけどね…
「またですか…一体どんな人が…」
「いえ…これは…非常に言い難いのですが…」
「なんでしょう。もう驚かないのではっきり言って下さい」
「相葉さんに憑いているのは、犬の霊です」
「いぬぅ!?」