第16章 グレイ scene1
月明かりの中に浮かぶ和は、幻想的で。
消えてなくなりそうで。
飛びそうな理性をなんとかつなぎ留めて、和を抱き寄せた。
「わかった…」
ぎゅうっと抱きしめると、和の身体が震えた。
「違う…」
「え?」
そっとまた起き上がって、和は俺の顔を見た。
そのままその顔がゆっくりと近づいてきた。
唇が触れる直前で、和の動きが止まった。
「なんで…避けないの…?」
「え…?」
「嫌でしょ…?男とキスなんて…」
「いやじゃ…ない…」
「え?」
「和なら…いやじゃない…」
驚いた顔をしてる和の唇に、自分の唇を重ねた。
びくっと身体が揺れたけど、和はそのまま俺の肩に腕を回した。
「…大野さん…」
「ん…?」
唇をつけたまま和が俺を呼ぶ。
その甘い声に、頭が蕩けて行きそうだった。
「もっと…して…?」
「ん…」
今度は和の唇をこじ開けて、口の中の舌を絡めとった。
「ん…」
和の小さな吐息が、俺を昂ぶらせた。
息が荒くなってくる。
身体が熱い。
和と触れ合ってるところ、全部が熱い。
「和…」
「ん…?」
「止まんなくなる…」
「…いいよ…?」