第16章 グレイ scene1
「スーパーアイドルアイバチャーンだろ!?しっかりしろよ!」
「うええええええ…」
顔をくっしゃくしゃにして泣きじゃくる雅紀の勢いは止らない。
「あああ…」
仕方なく、雅紀をぎゅっと抱きしめた。
落ち着くまで、背中トントンした。
暫くしたら、だんだん体重が俺に掛かって来て…
雅紀は俺の腕の中で眠ってしまった。
「ほんと…人騒がせな奴だよ…」
腕に抱きながら、暫く一人でビールを飲んだ。
時々、雅紀を眺めては悦に入っていた。
こんなに雅紀を近くで眺めて晩酌できるのって、俺だけじゃね?
そう思ったらニヤニヤが止まらなかった。
「ン…翔ちゃん…」
腕の中で雅紀が身じろぎする。
「ん?どうした?雅紀」
「寒い…」
ソファに置いてあるブランケットを掛けてやった。
にひゃってまた笑って、雅紀は眠りに落ちていく。
「…可愛いやつ…」
雅紀のオデコにちゅっとキスをした。
そしたら、なんか止まらなくて。
雅紀の唇にそっと自分のそれを重ねた。
やわらけえ…
ちょっとうっとりしてから、我に返った。
「どっ…あっぶねっ…」
焦って身体を離したら、ぱっちりと雅紀が目を覚ました。
「うわっ…」
「翔ちゃん…」
「ご、ごめんって!」
「もっと…」
「え?」
雅紀の手が、俺の手をぎゅっと握った。
end