第16章 グレイ scene1
「カンパーイ!」
雅紀が簡単な鍋を作ってくれて、それをツマミに酒盛りを始めた。
撮影現場で、本物のビールをいくらか飲んでいたから、ビールを飲むスピードは最初から早かった。
「ねえ、翔ちゃん…」
「んー?」
「ずっとこうやって一緒にいようね!」
「えっ…」
「え…嫌?」
「い、嫌じゃねえよ!!」
「ほんと!?」
嬉しそうに雅紀が笑って、俺に寄りかかってくる。
「大事だな…嵐…」
「ああ…そうだな…」
雅紀によりかかられたまま、俺は絶妙に微妙な気分になっていた。
雅紀の香水の匂い…
だんだんおかしな気分になってくる。
「翔ちゃん…これからもよろしくね?」
「あ、ああ…」
頭がくらくらするのは、酒のためじゃない…
雅紀が不意に顔を上げて、俺を見る。
透明な、きらきらしたガラス玉みたいな瞳。
「ねえ…翔ちゃん…」
「え…?」
「熱でもあるの?身体熱いよ?」
「そ、そりゃ…酒飲んでるから…」
そうは言ったけど、今日はまだ全然飲んでない。
「えー?だって全然飲んでないじゃん…」
だよね。ビール一缶すら開いてない。
「す、スタジオで飲んでたから…」
それも厳しい言い訳だった。