第16章 グレイ scene1
雅紀の家に着いたら、早速酒盛りの準備を始めた。
「あ、買い出し行ってこようか?」
「あのね、なんか材料一杯もらってきたから大丈夫!」
ちゃっかり撮影現場で余ったもの、貰ってきたらしい。
ビールまであるよ…
「こら…本来だめなんだからな?」
「わかってるって…秘密だよ?翔ちゃん」
小首をかしげながら言う雅紀。
なんだそれ…かわいいじゃねえか…
いたずらっぽく笑う雅紀に釘付けになった。
「翔ちゃん?」
「あ、へ?」
「どうしたの?」
「な、なんでもねえよ」
あぶねえあぶねえ。
最近、なんかあると雅紀に見とれることが多くなった。
失恋したからだろうけど、なんかやつれちゃって…
目が離せなかった。
「全く…なんだよなぁ…」
ビールを冷蔵庫に入れながら、一人ぶつぶつ言ってると、また雅紀が俺の顔を覗きこんでる。
「なんでもねえよ…」
べしっとおでこを叩くと、にひゃって雅紀が笑った。
ドクン…
心臓が高鳴った。
「あーもー邪魔!」
無理やり雅紀の顔をどかして、リビングに入った。
おかしい…なんかおかしいぞ…
嵐になって16年。
こんなおかしな気持ちになるのは初めてだった。
しかも、雅紀に…