第16章 グレイ scene1
その時、楽屋の扉がノックされた。
慌てて智くんから降りると隣に座った。
「ういーっす…忘れ物したぁ」
ニノがばたばたと入ってきた。
「あ、お疲れ。まだ居たの?」
ニノはテーブルに置いてあったスマホを取ると、ポケットにしまい込んだ。
「あれ…?なにぽーっとした顔してんの?」
そういうと俺の頬を手のひらで包んだ。
「大野さーん…翔ちゃんに悪さしたんじゃないだろうね?」
「んー?どうだろうね…」
にやにや笑いながら、智くんはソファに沈んでる。
「やっ…智くんっ…やめてよっ…」
「ふうん…」
ニノはにやにやしながら、俺の顔を引き寄せた。
濃厚なキスをお見舞いされた。
「んっ…う…」
息もできないくらい、激しいキスだった。
口角から唾液が零れても、やめてもらえなかった。
「に…ニノ…」
なんとか呟くと、やっとニノは顔を離した。
「ごちそうさま…美味しかった」
その時、また楽屋をノックする音。
「あ、大野さん居た…ちょっとすいません…」
スタッフがなにやら智くんを呼びに来た。
「え…?ちょっと…今、イイトコロだったのに…」
ぶつぶつ言いながら智くんは楽屋を出て行った。