第2章 アザリア
「もっ…もう、忘れろ!ヘンなこと言ってごめんなっ」
そう言って俺はまた逃げ出した。
今度はトイレにこもった。
ドアの外から、潤の呼ぶ声がする。
「翔くん!もういい加減にしなよ!出てこいよっ!」
「だってっ…だって潤っ…」
「いいからっ!出てこいって!」
「もう、聞きたくないからっ…言わなくてもわかってるから!か、かえっていいから!」
「なにわけわかんねーこと言ってんだよ!ここぶちやぶんぞ!」
「わああ!賃貸なんだからやめろ!」
慌ててトイレから出たけど、もうやっぱり耐えられなくて。
「ごめん潤。答えはもうわかってるから、言わなくていいから…」
そう言って足早に寝室に入った。
潤はまだ追いかけてくる。
断るだけなのに、なんでこんな追いかけてくるんだろう。
俺はもう居たたまれない。
「だからっ…!」
潤は俺の肩を掴むと、乱暴にベッドに俺を押し倒した。
「え…?」
なにこれ。
なにこの体勢…
潤に胸板の上に腕を載せられて、動けない。
俺の顔のすぐ近くに、潤の顔がある。
「まったく…聞けって…人の話を…」
そう言って、潤は目を閉じた。