第2章 アザリア
スマホの着信音で目が覚めた。
時計をみたら、昼を過ぎていた。
電話にでると、潤だった。
「あ、翔くん?どう?熱」
「おう…もう下がったみたいだけど…」
「だけど?」
「この前、体温計の電池切れたからわかんない」
「マジで?」
潤は暫く黙ってて、ガサガサ音がしたかと思うといきなり言った。
「そっち行くから」
「え?」
電話は切れてしまった。
焦って風呂に入った。
汗臭いまま、潤に会えないと思った。
汗臭いままで寝ていたベッドのシーツや枕カバーまで変えた。
なんでそんなことしたのか、よくわからなかった。
でも、とにかく汗臭いままでは会いたくなかった。
一時間ほどで潤は着いた。
入ってくるなり、パジャマを引っ張られて、体温計を脇に突っ込まれた。
ひやっとする感覚に身がすくんだ。
「つ、めてーよ…」
「我慢して」
そう言いながら、俺のおでこに手を当てた。
「あ…下がってるね」
そう言うと、にっこり笑った。
体温計が鳴る。
潤はそれを取り出し、満足気に頷く。
「じゃ、行くね」
「えっ?」