第12章 退紅(あらそめ)scene2
深夜、ひとりきりでリビングで酒を飲む。
あれから部屋は荒れ放題で…
一人暮らしをしていた頃に逆戻り。
いや…あの時より酷いな…
荒れた部屋を電気もつけないで眺めてた。
智くんにあんなことさせたのは…俺だ…
その思いから抜けられない。
毎夜、眠れないから酒の力を借りていた。
少しふわふわしてくるころ、ベッドに入る。
シーツも変えていない。
智くんの匂いが、まだ残ってる気がしたから。
「おやすみ…智…」
智くんの使っていた枕を抱きしめながら、一人夢の世界におちこんでいく。
そんな日常…
翌朝目覚めると、新聞を手に取る。
ある記事で目が止まった。
急いで着替えると、玄関に向かう。
靴を履こうとしたその時、玄関の鍵が開いた。
見つめていると、扉が開いた。
「智くん…」
智くんはにっこり笑って、扉を閉めた。
「ただいま…」
「おかえり…」
腕を広げると、智くんは飛び込んできた。
「待ってたよ…」
ぎゅっと抱きしめると、智くんの匂いがした。
いい香り…
「ごめんね…帰れなくて…」
「ううん…」