第12章 退紅(あらそめ)scene2
「全部…知ってたの…?」
「だから…なんのこと?」
そっと智くんの顔が近づいてきて、キスをしていく。
「泣かないで…翔くん」
いつの間にか、俺は涙を零していた。
「智…」
「大丈夫だよ…もう怖いことないからね…」
そっと俺の頭を抱えて抱きしめる。
「帰ろう。翔くん…俺達の家…」
「うん…」
それでも俺の涙は止まることはなく…
いつまでもいつまでも智くんの胸に抱かれていた。
翌朝、目覚めると智くんの姿はなく。
部屋のどこを探してもいなかった。
クローゼットの中にもいなかった。
それからずっと智くんは家に帰ってこなくて。
レギュラーの仕事が、特番の都合でなかったから、ずっと会えずにいた。
こちらから連絡をしても、でなくて…
ずっと不安な毎日を過ごしていた。
マネージャーからは、元気に仕事をしているという確認だけはとっていた。
なんで俺の前から消えたのか…
答えは、わかっていた。
わかっているだけに、智くんを無理やり探しだして会うということができないでいた。
智くんの方から、会いに来てくれるのを待つしかなかった…