第12章 退紅(あらそめ)scene2
「え…?」
楽屋で新聞を読んでいたら、事務所の人間が駆け込んできた。
それはフリーライターの男の死を知らせるものだった。
「なんでそんなことに…」
ちょうど事務所では男に金を用意していたところだった。
一回渡して、その先はまた対策を取ろうということになっていたはずだ。
「詳しいことは…櫻井さん、この件に関しては、あなたにこれだけ耳に入れておくようにと言われたので…」
「これ以上は、俺には深入りするなってこと?」
「はい…そういうことです」
「…わかった…」
事務所の人間が楽屋から出て行くと、ネットで記事を探した。
今日の新聞には載っていなかった。
「あった…」
昨夜の深夜、湾岸にある今は使っていない倉庫で、男性の遺体発見…
事件と事故、両方の線で捜査が行われている…
簡単な記事。
たった数行の中に、男の人生の終わりが書かれていた。
溜息をつくと、タブレットを閉じた。
あの男、他にもこんな脅しをかけていたんだろうか…
少なくとも今回の事件は、俺達が手を下したんじゃない…
他の誰かに、殺されたんだろうな…
懐からあの男の名刺を取り出す。
ライターで火を着けて、灰皿の上に置いた。