第2章 アザリア
俺がふっと笑うと、潤がにっこり笑いかけてきた。
…こいつ、よくみてるんだよな…
ジュニア時代から、ずっと潤は俺のことよく見てる。
嵐になってからも、視線を常に感じてる。
にっこり笑いかけてくれた八重歯はもうないけど…
あの微笑みは、今でも俺の胸の中にある。
翔くんと呼びかけてくれた、声も。
「…ありがとな、潤…」
そう言うと、照れくさいから立ちあがって楽屋を出た。
ケータリングの部屋に行って、適当に見繕って食べていると、潤も後を追ってきた。
「隣、座るよ?」
いちいち断らなくてもいいのに、いつも聞いてくる。
断ったって座るんだもん。
部屋にはまだ誰も来てなくて、ふたりっきりで飯を食べた。
「…なんかあったの?翔くん」
「ん?いや…体調悪いのかな…」
「え?ちょっと…!」
潤が俺に向かって手を伸ばしてきた。
額に触ると、顔を歪めた。
「翔くん…熱ある」
「え?マジで?」
「もー…なんで気づかないかな…」
「いや、大したことないから…」
「うん。でも、最終日だし無理しないでね?」
「分かった。皆に、言うなよ?」
「わかった…」
しぶしぶといった感じで、潤は同意してくれた。
大事にしたくなかったんだ。