第2章 アザリア
玄関の鍵を、チャリチャリ鳴らしながら廊下を歩く。
今日は晩飯も食べたし、風呂入って寝るだけだ。
めずらしくスケジュール通り終わったので、まっすぐ家に帰ってみてる。
こんなにスケジュール通りになることはめったにない。
必ずどっかで押すのが、テレビ業界の常識だ。
上機嫌で鍵を開ける。
あ、潤が来てる。
「ただいまー?」
声を掛けてみるが、返事はない。
寝てんのか?
珍しい。
リビングから明かりが漏れていたから、まずそこをあけてみる。
ソファに凭れかかって、寝てる潤が居た。
「じゅーん?そんなトコで寝るなよ…」
「…んー…?あ…おかえり…」
潤は伸びをしながら、こちらを見る。
目が潤んでて色っぽい。
「あ…れ?今日は早かったね?」
「おう。なんとスケジュールドンピシャで終わった」
そう言って笑うと、潤も笑った。
「めっずらしぃね…」
もう一回あくびをすると、ソファに伸びた。
「手、洗ってきなよ。翔」
「ん。あと、着替えてくる」
「いってらっしゃい…」
そういうと目を閉じた。
寝てる顔は今でも天使だ。
心臓に悪い。
俺は寝室で手早く部屋着に着替えて、洗面所へ行く。
洗濯機に洋服をぶちこんで、手と顔を軽く洗った。
汗臭い姿で、潤の前に居たくなかったから。