第10章 チャイニーズ・ローズ
それからの日々は、砂のようだった。
何をしても、脆く崩れ去っていく砂上のようだった。
でも…
彼女が
彼女が俺を、引っ張りあげてくれる。
どんなときも、俺を見捨てないで寄り添っててくれる。
砂上でも、なんとか立っていられた。
彼女のお陰だった。
ソファで膝を抱えて、スマホが鳴り止むのを待った。
留守電に切り替わって、静かになる。
そろりとスマホを持ち上げた。
画面に表示された、不在通知。
”櫻井翔”
その文字を見るだけで、心がかき乱された。
「潤ー!今日はお魚食べられる?」
「あ、うん…大丈夫…」
最近、時々気持ち悪くて魚が食べられないことがあった。
彼女はちゃんと覚えておいてくれて、そういうところまで気をつけてくれる。
愛されてると思った。
それに応えていきたい。
そう思うようになってきた。
「ありがとな…」
届くことのない声をだすと、チャイムの音が鳴り響いた。
彼女がキッチンから顔を出した。
「何?こんな時間に」
時計は22時を指していた。
「さあ…今日はだれとも約束してないよ?」
モニターを確認すると、誰も写っていない。