第10章 チャイニーズ・ローズ
それから季節が移ろって…
相変わらず俺と彼女の結婚報道は、思い出したように出てる。
あんなことがあったのに、何故か彼女は許してくれて。
身体の関係はないけど、まだ二人で会うことはやめてなかった。
彼女と居ると、ほっとした。
美味しい手料理を作ってくれることもあった。
たまに、二人で身体を寄せあって眠ることもあった。
でも…ただ、それだけ。
”潤が好きなの…だから、待つね…?”
そう言ってくれて…
でもね…俺の片思いは、もう10年以上。
お前の想いよりも長いんだ。
そう言っても、彼女は笑うだけで…
”いいよ…なんか潤らしいじゃん”
そう言って、抱き寄せてくれた。
そんな彼女に、俺は甘えてて…
ただ、甘えてた。
時々、思い出したように翔くんが俺をあのマンションに呼ぶ。
しっぽを振って、俺は翔くんに抱かれに行く。
そんな日は、なにもかも忘れて翔くんの腕の中で乱れた。
翔くんが笑ってくれるから…
翔くんが、俺を見てくれるから…
なにもかも捨てられた。
なにもかもどうでも良かった。
翔くんに抱かれさえすれば。