第9章 きみどり scene4
スタジオのすぐ外にあるトイレに智を押し込めると、個室に入った。
鍵をかけて智の顔を見ると、まだ雨に濡れた捨て犬。
「智。だめでしょ?仕事なんだから」
「わかってるよ…」
ぷいと横を向いた。
唇を尖らせて。
子供みたい。
そっと智の頬に触れた。
「え…」
智が驚いて俺の顔をみた。
「だから…シたくないって言ってないじゃん…?」
そっと唇を寄せた。
ちゅっと音を立ててキスをすると、また顔を見た。
「ただ、仕事の前とかセーブしよって話だよ。あんた、それができないから、暫くしないって言ったの」
「だって…かず…」
「わかってる。好きなんだよね?俺のこと。俺もすきだよ…」
捨て犬の体温がどんどん上がる。
そっと胸に顔を埋めると、ますます熱くなった。
「俺のことすきなら、ちゃんと考えてよ…」
「かず…」
「俺もあんたのこと、大好きだよ…好きだから、本当はこんなことしたくないんだから…」
「わかった…かず…我慢する」
この人、決意するとちゃんとやり遂げる。
「うん…ありがと。わかってくれて…」
「でも…ちゅーは…?」
くすっと笑いがこみ上げた。
「いいよ?シよ?」
そっと唇が重なると、智は止まらなかった。