第8章 インディゴ scene1
リハーサルを終えてホテルに帰ったら、22時を過ぎていた。
慌てて、智くんの誕生日を祝う準備をする。
シャンパンの代わりに、白ワインを用意した。
俺の部屋に、簡単に食事ができるよう食べ物も準備してもらって、それを並べた。
後は、雅紀が智くんを連れてくるのを待っているだけだ。
でも…23時を過ぎても二人は来なくて。
ラインを入れてみたら、智くんのソロで直しが入っているということだった。
ああ…
もしかして、誕生日になる瞬間は一緒に居られないかな…
そんなことを思いながら、ぼけっと窓に凭れた。
せっかく準備したのに…
ぽつんと遠くにある赤いライトを眺めた。
淋しい…
早く、二人に会いたい…
もうあと10分待って、こなかったらシャワーでも浴びようと立ちあがった瞬間、乱暴にドアを叩く音がした。
慌てて出ると、雅紀が智くんを引っ張って入ってきた。
「セーフっ!」
笑いながら、俺を抱きしめた。
「間に合ったよ!翔ちゃん!」
満面の笑顔で言うから、泣きそうになった。
「うん…よかった…」
「翔くんこれ…」
智くんがテーブルに並べられた食事をみて、嬉しそうに微笑んだ。