第8章 インディゴ scene1
智くんに顔を向けないで、コーヒーをマグカップに注ぐ。
「…どうしたの?今日…電話にも出ないし…具合、悪いのかと思って…」
「あ…ごめんね…連絡くれてたんだ…気付かなかった」
やっぱり顔が見られなかった。
「…翔くん…どうしたの…?」
智くんが、すぐ背後に立ってた。
そっと俺の肩に手を掛けると、智くんの方に向かされた。
「俺の顔、見て?」
そう言われても…
智くん…雅紀と付き合ってるんでしょ…?
なんで…俺にキスしたの…?
そんなこと、聞けない。
どんな答えが返ってくるのか、怖い…
「コーヒー、持ってくれる?」
マグカップを無理やり一個手渡して、キッチンを出た。
二つ手に持って、リビングに行くと、雅紀の前に一つカップを置く。
「どうぞ」
やっぱり雅紀の顔も見られなくて。
「翔ちゃん…?」
「なに?」
ごまかすために、テレビを点けた。
なんだか知らない番組が入ってて。
知らないタレントさんがでてるけど、画面を注視した。
考える時間、欲しい…
「やっぱり、様子おかしい」
雅紀の声が真剣だった。