第8章 インディゴ scene1
そのあと、雅紀が言ったことはあまり覚えていない。
ただ、やっぱりふたりは恋人同士で。
すき同士で。
わからなかった。
なんでふたりは、俺にキスしたの?
なんで…?
その日の仕事は散々だった。
チラチラとふたりの顔が脳裏に浮かんでは消えた。
心臓がずっと痛かった。
なんで?なんで、俺なの?
なんで俺はふたりを…
スタッフに体調が悪いとつげると、内容を少し変更してくれて。
申し訳ない気持ちになりながらも、台本どおりにやるのが精一杯だった。
なんとか収録を終え、帰路に着いた。
事務所の車で送られて、自宅の側で降ろしてもらう。
スマホに着信があったのに気づいたのは、この時だった。
「あ…」
智くんだった。
どうしよう…
こんな乱れた気持ちのまま話したくなかった。
スマホの電源を落とした。
家に入ってシャワーを浴びる。
熱いお湯を浴びて全て忘れようとした。
でも、ますますふたりのことが思い出されて…
逆効果だった。
タオルで身体を拭いてると、インターホンが鳴った。
誰だろう。
そっとドアモニを見ると、智くんと雅紀が映っていた。