第8章 インディゴ scene1
「翔ちゃん…」
手をどけられる。
「だめ…雅紀…だめだよ…」
「翔ちゃん…もう…」
雅紀が俺の手をゆるく引っ張った。
手に熱いものが触れた。
硬く…なってる…
「止められない…」
「雅紀…」
涙が溢れてきた。
なんで…?
付き合ってるんじゃないの…?
なんで俺にこんなことするの?
浮気のつもり?
なんで…二人とも…わからないよ…
「ごめん…翔ちゃん…」
いつの間にか、雅紀に抱きしめられてた。
「泣かないで…翔ちゃん…」
「まさ、きっ…」
「ごめんね…怖かった…?」
「雅紀ぃ…」
「これ以上しないから…安心して…?」
そっと俺を包み込む腕は優しくて。
その声は穏やかで。
一気に緊張の糸が緩んだ。
眠気が襲ってきて、抗えなくて意識を手放した。
雅紀の腕の中…熱い…
まぶし…
朝の光が目を刺した。
「翔ちゃん、朝だよ」
優しい声が降ってきた。
そっと頬を撫でる、温かい手。
「起きて?遅刻するよ?」
からかうような声色は、きっと俺が起きてるのがわかってるんだ。
「あと5分…」
ちょっと、甘えてみた。