第8章 インディゴ scene1
ほかほかのかけ蕎麦が出来上がった。
「ごめんね、冷凍の麺しかなくて」
「ううん、充分だよ」
いただきまーすとふたり、声が揃って、また目を合わせて笑いあった。
食べ終わると、雅紀が汗だくになってて。
傍にティッシュがあったから、一枚取って額を拭いてやった。
「あ…」
慌ててティッシュを押さえようとして、雅紀の手が俺の手に触れた。
「翔ちゃ…」
一瞬、雅紀と目が合って。
にこっと笑いかけたら、雅紀が真顔になって。
雅紀の熱い手が、俺の手を握りこんだ。
ティッシュが落ちた。
「え…」
「翔…ちゃん…」
ついに、雅紀の口から智くんとのこと、言われる。
そう思ってぎゅっと目を閉じた。
ごめん…雅紀…
「いいの…?」
なに…?
「しちゃうよ…?」
なにを…?
ふわっと、雅紀の汗の香りがした。
全然いやな匂いじゃなくて。
むしろ…
「ん…」
小さな、小さな、声。
唇に、温かく柔らかい…
「翔ちゃん…」
唇が重なったまま、雅紀が俺の名前を呼ぶ。
「あ…」
何が起こってるのかわからず、返事をしようとしたら、また塞がれて…
「ん…ぅ…」
深く唇を塞がれて、俺の口からも小さな声が漏れた。