第8章 インディゴ scene1
シンクを水が滑っていく音がする。
智くんの唇の感触に集中してたら、いつのまにかそれは止まってて。
智くんに握られた手首が熱い。
智くんに抱きしめられた身体が熱い。
「智…くん…」
唇を離さず名前を呼ぶ。
いつまでも繋がっていたかった。
熱い唇。
「翔…くん…」
切ない声で俺を呼ぶから、唇を離して顔を見つめる。
「反則…そんな顔して…」
俺の頭の後ろを持って、ぎゅっと抱き寄せられた。
どんな顔してるのかな…俺…
そっと智くんの背中に手を回して、ぎゅっと抱きしめた。
そのまま暫く俺たちはそこで抱き合っていた。
お風呂のお湯がはいったとアラームが鳴って、やっと身体を離した。
「智くん、入ってきなよ…」
「うん…ありがと…」
俺の頭をくしゃっと撫でると、智くんはキッチンを出て行った。
俺は立っていられなくて、リビングに入るとソファにダイブした。
何が起こったんだろう…
俺、智くんとキスしちゃった…
抱き合っちゃった…
どうしよう…雅紀と付き合ってるのに…
雅紀…明日、どんな顔して会えばいいんだろう…