第8章 インディゴ scene1
それでも、なんだか離したくなくて。
咥えたまま雅紀の顔を見てたら、雅紀の顔が真剣な表情になった。
不意に、雅紀の指が動いた。
俺の舌をざらっと撫でていった。
ぴちゃっと、音がした。
だんだん雅紀の顔が、赤くなってきて…
口の中の指が、上顎をそっと撫でた。
ぞわっと背中を走っていくものがあった。
「翔ちゃ…」
雅紀の口が動いて、俺に身体を近づけようとした瞬間、コンロにかけていた鍋から、沸騰を知らせる音がした。
雅紀がはっとした顔をして、俺の口から指を抜いた。
「もう…大丈夫だから…」
「う…ん…よかった…」
俺は台所を離れて、絆創膏を取りに行った。
戻ると、いいという雅紀の手を取って無理やり石鹸で洗って、きちんと拭いてから、絆創膏を貼り付けた。
「小さい傷をなめてると、痛い目にあうからな」
「うん、ありがとう。翔ちゃん」
照れたように横を向きながら、答えた。
またベッドに戻るように言う雅紀に逆らって、俺はリビングのソファで丸まった。
雅紀が溜息をついて、俺に毛布を掛けてくれた。
「そこで大人しくしてるんだよ?翔ちゃん」
そう言って、また調理に戻っていった。