第8章 インディゴ scene1
ふと目が覚めると、もう辺りは暗くて。
ああ、もう夜か。
日が落ちるのが早いなと思って、回りを見渡した。
目の前の運転席と助手席を何気なく見た。
…目を疑った。
雅紀と智くんが…キスしてた。
信じられなかった。
なんでとかどうしてとか、そんな単純な言葉はでてこなくて。
信号が青に変わると、ゆっくりと二人は離れて。
微笑み合うと、雅紀は車を緩やかに走らせた。
智くんがこちらを振り返る気配があったから、慌てて寝たふりをした。
いつの間にか、身体にブランケットが掛けられてて。
もぞもぞと身体を動かして、顔を隠した。
そうしてないと、耐えられそうになかった。
泣きそうだったから。
なんでなのか、自分でもわからなかった。
ただ、淋しかった。
俺だけ、おいて行かれたような気分だった。
ぎゅっと唇を噛んだ。
何度か来たことがあるから、迷うことなく、俺の住むビルの地下に雅紀は車を入れた。
「翔ちゃん、なにか買い出しいく?」
「あー…酒はあるけど、食いもんがねーな…」
「じゃあ、俺、行ってくる」
「あ、俺がいくよ!リーダー!」
「二人でいけばいいじゃん」
付き合ってんならさ。
喉まで出かかった。