第8章 インディゴ scene1
手を拭いて、心臓のあたりを拳で軽く叩く。
別になんともないんだけどな…
なんできゅってするんだろ?
振り返ると、まだ雅紀は智くんに抱きつきながらこちらを見ていた。
「翔ちゃん…怒った?」
「おっ…怒ってねーよっ」
俺まで思わず雅紀の頭をくしゃっと撫でた。
すんっと雅紀が鼻を鳴らした。
「えっ…泣いてるの?」
「泣いてないもん…」
「怒ってないから!」
「だから、泣いてないっ」
そう言うと、智くんの肩口に顔を埋めてしまった。
智くんは、優しく微笑んでそっと雅紀を抱きしめた。
「大丈夫だよ。甘えたいんだよ。この子…」
そういうと、雅紀の背中を撫で始めた。
また、きゅっと心臓が縮まった。
…やっぱりなんかオカシイ…
今度心電図とってこようかな…
トントンと心臓をまた拳で叩いた。
智くんがそれをみて、トンと俺の胸に拳を当てた。
「どうしたの?痛いの?」
気遣わしげな目で、俺をみた。
「いや…別に…」
「無理しちゃだめだよ?」
そういって、にこりと微笑んだ。
雅紀が顔を上げて、智くんの拳の横に、トンと拳をつけた。
「だめよ?」
うるうるした目を俺を見上げた。
なんか…苦しい…