第8章 インディゴ scene1
「ねーっ!翔ちゃん!」
楽屋のイスに座って新聞を読んでいると、雅紀が後ろから抱きついてきた。
「うわっ…」
思わず手に持っていたコーヒーを落としそうになる。
「なっ…お前っバカっ…」
「あっごめんね。こぼしちゃった…」
「ティッシュ…ティッシュ…」
「はい、翔くん」
智くんがティッシュの箱を差し出してくれた。
「あ、ありがとう。智くん」
「いーえ」
ニコニコしながら箱を持っててくれる。
「あ。ごめんね。そこ、置いといて」
「ん。いいよ。早く拭きな?」
そういって、箱を持ったまま立っている。
「あ、ほんといいのに…」
「いいの。ほら、ここもついてるよ?」
「あっ…ヤベ…」
慌てて洗面台まで行って、衣装についたシミを落とした。
「まーさきー…お前が買い取れよ…」
「ごめんて…衣装さんに俺が言っておくから…」
「当たり前だ。バカ」
シュンとしてる雅紀の頭を、智くんがポンポンした。
雅紀が顔を上げて、智くんに抱きついてる。
鏡越しにそれをみて、なんだか胸がきゅっとした。
…なんだ…?これ…
今度、心臓の検査いかないといけないかな…