第7章 虫襖-ムシアオ-
「あ…う…」
潤のうめき声…
それに重なるように、寝室の入り口でコトリと音がした。
半開きだったはずの扉。
開いていた。
潤が気だるそうに、それに気づいて立ちあがった。
「誰…?」
扉に向かって歩いて行く。
きょろきょろと廊下を見渡して、床に目を落とした。
何か拾い上げて戻ってきた。
「これ落ちてた」
ベッドにへたりながら、それを受け取る。
合鍵だった。
雅紀に渡したもの。
ガバッと起き上がるけど、潤に絡め取られて、再びベッドに押し倒された。
「離してっ…雅紀っ!」
「和也…雅紀、お前のこといらないってよ…」
にやっと潤が笑う。
いやだ…嘘だ…
そんなはずない…
雅紀が俺を捨てるはずない。
やめて潤…
どいて
「もう…無理だってよ…」
くっくと笑って、俺の上からどいてくれない。
それどころか、潤はまた中心を立ち上がらせてて。
俺の顔みて、潤は感じてるんだ。
俺の苦しむ顔が、潤にはごちそうなんだ。
どいてよ
「あーあ…雅紀に振られちゃったね…15年も付き合ったのに…」
15年…
15年も一緒にいてくれたのに…
やめて…やめて…
置いて行かないで…