第7章 虫襖-ムシアオ-
それは音もなくやってきた。
潤から仕事の依頼があった。
これで最後にしようとマンションに呼んだ。
俺の話を聞く潤は、とても冷静に見えた。
「それってさ…雅紀だけのお前になるってこと…?」
「うん…もう…素直になりたい…楽に…なりたいんだ…」
「ふうん…」
潤が冷たい声をだすのを初めて聞いた。
「ごめんね…潤」
そう言ってみても、潤の表情は変わらなくて。
「…なにがお前を変えたんだよ?」
「わかんない…わかんないけど…雅紀が俺のこと、変えたのかもしれない」
「へえ…」
潤は立ち上がると俺の傍に歩いてきた。
左手で俺の頬を包む。
急に頬に熱い刺激が走った。
潤が、殴った。
「そんな話、聞けると思うのか」
「え…?」
「ふざけんなよ…和也」
そういうと俺を引きずるように寝室へ連れて行って、また殴られた。
「やめっ…潤っ…」
抵抗したら、腹を思い切り殴られて。
前のめりになったところに膝を入れられた。
「ぐっう…」
そのまま髪の毛を掴まれてベッドに投げ出される。
潤は俺に馬乗りになって、顔以外めちゃくちゃに殴った。