第7章 虫襖-ムシアオ-
その日から、俺は雅紀を遠ざけるようになった。
思わず出た本音。
あんな形で知られたくなかった。
雅紀に汚されることを夢見てるなんて…
自分でもよくわかってなかった。
俺は汚したいんじゃない…
汚されたいんだ…雅紀に。
酒に溺れた。
時には女も抱いた。
でもなんにも感じなかった。
感じないんだ…
心の奥底に冷たい氷の塊を抱えているようだった。
「ニノ…」
仕事で会う度に、雅紀が縋ってくる。
その度に俺は振り払う。
「今日は…くるな」
その一言で、雅紀の足が止まることを俺は知ってる。
「今日も…客なの…?」
雅紀の綺麗な目が潤む。
「ああ…そうだよ」
「ねえっ…最近どうしちゃったの!?俺が…俺が変わるからっ」
「だめだ…」
「なんでっ!?俺が…抱かないから?」
「…黙れ…」
「ニノ…」
「それ以上言ったら、別れるからな」
なんで別れるって言えないんだ。
こんな苦しい思いするなら、わかれりゃいいだろ…
「いや…それだけは…いや…」
泣きながら俺を包む。
その温かさに甘えてしまいたかった。
その瞬間だけ
生きているって思えるから。