第7章 虫襖-ムシアオ-
部屋の呼び鈴が鳴る。
扉を開けると、いつもの顔。
「おう」
ムスクの香りをさせながら、声の主がはいってくる。
「珍しいね。お前からなんて」
そう言いながら、上着を脱いだ。
その広い胸に、飛び込んだ。
「和…」
「今日は…金いらないから…」
「え?」
「抱いて?」
ぎゅっと抱きつくと、溜息をついた。
「いいけど…?俺はお前が好きなんだから…」
そういうと、そっと俺の頬を手のひらで包んだ。
「和…相葉くんとなにかあったの?」
「別に…」
「別にってツラかよ…」
頬を手で滑らせながら、長いまつげを曇らせる。
「そんなんじゃ、抱けないよ?」
「なんで…?」
「俺以外の男のことで泣いてる和なんて抱けないって…」
そう言って微笑んだ。
「潤…お願い…」
「じゃあ…金払うよ」
「え?」
「仕事として、俺と寝るなら抱いてやるよ。俺も、遠慮しないし」
「でも…」
「なんで…?素の和を抱いてほしいの?」
「それは…だめ…」
「だろ?なら、ちゃんと金払うから」
そう言って封筒を差し出した。
「こいよ。和」