第7章 虫襖-ムシアオ-
「最近、ニノやりすぎ」
「へ?」
翔さんから意外なこと言われて。
びっくりした。
「なん…のこと?」
翔さんは黙って、俺の首筋を指した。
慌てて鏡をみたら、ついてた…
キスマーク…
「ごめん…気をつける…」
「ほんと、相手にちゃんと言っときなよ…?」
楽屋の鏡越しに見つめられる。
「ニノ、今晩…」
「いいよ?ただし…」
「わかってる。ちゃんと用意してくから」
翔さんは背中を向けて楽屋を出て行く。
「あ。ちゃんと雅紀こないように言っとけよ?」
「わかってる」
微笑むと、翔さんは微笑み返して出て行った。
今晩も、仕事。
鏡に向かってドーランを付け直す。
首筋の一番目立つところ。
こんなところにつけて…
雅紀…
こんなことじゃ、俺を綺麗にはできないよ?
お前のものにもならないよ?
鏡をみたら、笑ってて。
知らずに笑っててびっくりした。
こんなことで…
浮足立つ気持ちを押さえた。
愛してはいけない。
愛されてもいけない。
心を許してはいけない。
それが俺の罰だから。