第7章 虫襖-ムシアオ-
一切が終わって、雅紀の胸に凭れていた。
「ニノ…?どうしたの…今日は…」
「別に…?なんでもない」
「うそ…なんかあったんだろ…?」
また、まっすぐに俺を見つめる。
目を逸らすと、雅紀の腕が俺をしっかりと抱きしめた。
「俺…ニノのためならなんだってするよ…?だから、言って…」
「嘘つけ…そんなのできるかよ…」
「できるよ…ニノのためなら…」
そういうと、艶然と嗤う。
俺と身体を重ねる回数が増えて、コイツには妙な色気がでてきた。
でも…
根っこの部分を汚すことはできなかった。
「お前には無理だから…」
そう言い捨てると、雅紀の胸で眠りに落ちた。
なにもかも、忘れて。
その週末、母さんから電話があった。
父さんの為に、金を都合できないかという電話だった。
こんなことは初めてで。
あの時渡した金で、足りなかったのか…
母さんはこれが最初で最後だからと言った。
それほど、父さんは追い詰められているのか…
この前ありったけの金を渡してしまった。
それに、最近、雅紀との情事に溺れて、客を取っていなかったのが痛かった。