第7章 虫襖-ムシアオ-
その日から、毎日のように雅紀は俺のマンションにやってきて、俺に足を開いた。
若かった俺たちは、お互いに溺れた。
そんなだったから、客を取る暇もなくて…
今になって思えば、それが雅紀の狙いだったのかもしれないけど…
ある日、父さんが俺を訪ねてきた。
目の下の隈が、事態の重さを語っていた。
「もう…父さん、だめかもな…」
そう言うと、俺の手を握った。
「和也…父さんのようになってはいけない。それから、もう金は必要ないから…」
それだけ言って、父さんはマンションを後にした。
「父さん!」
ありったけの金をかき集めて、父さんを追った。
「和也…」
黙って金の入った封筒を差し出した。
中をみて、父さんはびっくりした。
「お前、こんな金どうしたんだ!」
「いいから…使えよ!」
「和也っ…」
返事も聞かず、俺は走りだした。
「和也っ…」
父さん…俺は…
父さんのために…
涙が溢れてくる。
マンションのエントランスに駆け込むと、雅紀が来たところだった。
「ニノ…?どうしたの?」
泣いている俺を抱きしめると、ふんわりと微笑んだ。
その日も、俺は雅紀に溺れた。