第7章 虫襖-ムシアオ-
でも…
気づいた奴がいたんだ。
雅紀…
「ねえ…ニノ。最近、ちゃんと食べてる?」
そんなことを言いながら、仕事の度に俺に付きまとう。
ほっとけよ。
お前と俺は違うんだ。
お前みたいなまっすぐなヤツ、そばにいるだけで気分が悪い。
いつも流してた。
でも…
あいつが俺に微笑みかけるたびに、俺の中のドロドロとしたものが溶けていくような感じがした。
一緒にいると、身体が浄化されていくような気がした。
笑いあってると、許されたような気がした。
…全部、幻想だったけどね…
その日も、脂でギトギトのおっさんの相手をした後だった。
幸い、今ついてる客は手荒なことはしてこない。
気怠い身体をシャワーで流して、制服に腕を通した。
ピンポーン…
「え…」
朝、部屋の呼び鈴がなることなんてない。
おそるおそるモニターを見たら、雅紀が立ってた。
「えっ…」
混乱が俺を襲った。
なんで…
誰もここは知らないのに…
事務所には、俺は実家に住んでいることになってるし…
ましてや、嵐の皆にはこんなこと知られたくないから、黙ってたのに…