第7章 虫襖-ムシアオ-
「ニノ!お疲れ~!」
今日はレギュラーの収録日。
局の廊下で、入の雅紀と偶然出会う。
犬みたいについて回る雅紀に、今日は久しぶりのプレゼント。
「雅紀」
そう言ってにっこり笑ってやったら、すごく嬉しそうな顔をして。
俺も嬉しい。
「今日は、久しぶりに畑中さんのとこな?」
「え…?」
さっきまでの笑顔が引っ込んで、あっという間に傷ついた顔になる。
「…嫌だったら、別にいいよ…?」
「ニノ…」
人気のない廊下の陰に雅紀を引っ張りこむと、強引に唇を奪った。
「俺が行くから…」
「あ…やだ…ニノ…」
「じゃあ、畑中さんとこ行くよな?」
「…わかった…」
下を向いて、唇を噛みしめる姿を抱きしめる。
「俺だってホントはこんなことしたくないんだよ…?」
「わかってるよ…ニノ…しょうがないもんね…」
バカだな…
親の借金なんて嘘なのに…
まだ信じてるんだ。
もう15年近く経つのに。
「終わったら…ニノの家、行ってもいい…?」
「いいよ…合鍵で入っておいで?」
「ありがとう…」
涙目になりながら、嬉しそうに微笑む。
こんなに汚してやってるのに。
全然、汚れない。