第7章 虫襖-ムシアオ-
「やだぁっ…やめてっ…」
雅紀の声が、今でも耳に残る。
「はい、二宮」
その時渡された万券。
たった二枚の万券。
こんなものの為に、俺は雅紀を売った。
犯される雅紀の声を聞きながら、どす黒い快感が這い登ってくるのを止められなかった。
その時、初めて自分の気持ちに気づいた。
15年近く前に、感じた吐き気を、俺はずっと今でも感じてる。
デビューして、これだけ嵐が軌道に乗った今でも。
今でも雅紀は俺の傍にいる。
まるでそれが使命かのように、俺の傍から離れようとしない。
俺はそれを許してる。
突き放すことなんてできない。
だって、お前が必要だから。
でもそれは言ってやらない…
あの時の二枚の万券は、今だ俺の手元にある。
一生、切り払うことのない茨のように、俺の行動を戒めてる。
愛しては、いけない、と。