第6章 きみどりscene3
事務所の車で俺んちに向かってもらって、急いで荷物をカバンに詰める。
トランクケース一杯に、荷物を詰めると、俺の車で智の家に向かった。
来客用に借りていた駐車スペースが、今日から俺の愛車の定位置になった。
智がトランクケースを持ってくれた。
急ぎ足で部屋に行くと、玄関に入るなりぎゅううううっと俺を抱きしめた。
「かず…おかえり…」
声が震えてて、びっくりした。
「どうしたの…?智…」
「ん…」
言うだけで、顔をあげようとしない。
泣いてる…?
「智…?」
「な、なんでもな…」
語尾が消えたかと思うと、ぽとりと俺の手に涙が落ちてきた。
「ちょ…」
「かずっ…大事にするからっ…」
そういうと俺の左手を取って、ペアリングの片割れにキスした。
またぽたりと手に涙が落ちた。
「こんなに…大事だって…思ったことない…」
またリングにキスする。
「だから…かず…一生傍に…」
「智…」
そっと智の左手を取った。
薬指に輝くリングに、唇で触れる。
「言われなくても…そのつもりだよ…?」
智がゆっくりと顔を上げた。
涙が一筋、頬を滑っていく。