第6章 きみどりscene3
「こんなの…言えるわけないだろ…お前に…」
顔を逸らすと、かずが俺の顔をむりやり前に向けた。
「……嬉しいよ」
「え…?」
「あなたがそんなこと言ってくれるなんて…」
かずの唇が、そっと近づいて頬に触れた。
「嬉しい…」
おでこをくっつけると、そのまま俺を抱きしめた。
「もっと、嫉妬して?」
抱きしめる腕に力が入った。
「もっと、好きになって?」
「…いいの…?」
「いいよ…もっと、独占してよ…」
耳元で、囁く声。
「俺は全部、あなたのものだよ…」
かずの背中に手を回そうとした瞬間、スマホが鳴り響いた。
かずが黙って立ち上がると、スマホを手にとり、俺の顔を見た。
「収録、再開するって。いこう?」
手を差し伸べてきた。
「うん…」
手を取ると、二人で楽屋を出た。
手をつなぎながらスタジオに向かった。
こんなのいつもやってることだから、誰も俺たちを注視しない。
でも。
とてつもなく、俺は幸せだった。
この世で、かずという人間を。
まるごと俺のものにしたんだ…
「かず…」
小さな声で呼びかける。
「…ん?」
「愛してる…」
「愛してるよ…」