第1章 しあわせはここにある-parallel-
「だめだって…こんなこと…」
なんとか声を振り絞ってニノを止めようとした。
でもニノの手は止まらなくて。
シャツのボタンを外し終わったら、俺の胸板に手を滑りこませてきた。
シャツを広げると、俺の肌を撫でた。
「ホラ…こんなにきれいじゃん…」
つつっと手が胸板をなぞる。
そのまま首筋に来ると、頭の後ろに手を添えた。
「抱いて…いい?」
ニノが俺の顔を自分の方に向ける。
「え…?何、言って…」
「俺、大野さんのことが好きだ」
ニノが俺の目を真っ直ぐ見ながら言う。
「好きだから、抱きたい」
「だ…だめだよ…そんな…」
「大野さんは、俺のこと、好きじゃないの…?」
「好きじゃないっ!」
こんな汚い俺に、ニノに好きになってもらう資格なんてない。
「じゃあ…好きになって…」
強引に抱きしめられた。
引き剥がそうともがいても、やっぱり外れなくて。
ニノはそんな俺にはお構いなしに、耳を愛撫し始めた。
耳たぶを甘咬みしながら、囁いた。
「全部、忘れさせてあげる」
そして顔を上げると、俺の目をまた真っ直ぐみた。
切ない眼の色をしていた。