第1章 しあわせはここにある-parallel-
ニノの顔が歪んだかと思うと、ポロポロと涙が溢れだしてきた。
「大野さ…ん」
驚いた。
なんで泣くの…?
何もできずに、ただニノの顔を眺めた。
触れることが、できない。
「なんで、突き放すの…?」
俺は目を逸らした。
それは俺が汚いから…
ニノを俺の汚さで、よごしたくないから。
ニノが歩み寄ってくる。
「あなたの傍に居たいよ…」
「え…?」
「傍に、居させてよ…」
ニノが俺の前まで来た。
そっと俺に向かって手を伸ばしてくる。
身体がびくっと縮こまった。
怖かった。
ニノの手が俺を抱きしめた。
最初はそっと包まれた。
俺は震えた。
だめだ…ニノ…
そう思うのに、身体が動かなかった。
だんだん力が入ってきて、ぎゅうっと抱きしめられた。
「大野さん…こんなに痩せて…」
ニノの言葉が詰まった。
「ごめん…ごめんね…大野さん…」
なんで謝るの…?
ニノが謝ることなんかなにもないのに…
肌を密着させてると、ニノがどんどん汚染されていくようで怖かった。
「離して…」
「嫌なの?俺に抱きつかれてるの」
「…イヤじゃない…でも離して…」
「いやだ」