第1章 しあわせはここにある-parallel-
寮についた。
実家はかあちゃんがショックで倒れて、俺が帰れる余裕がないから、しばらく事務所の寮で過ごすことになった。
しばらくここで一人暮らしをする。
ここだったら三食飯も出る。
一人になれるから、返って好都合だった。
ドアを開けると、エントランスにニノが立っていた。
「大野さん」
にっこり笑って俺の方に歩み寄ってくる。
また怖くなる。
汚したくない。
目をぎゅっと瞑った。
「…どうしたの?」
ニノが心配そうに俺の顔を覗きこむ。
そっと俺の手を掴んだ。
…病院にいる間、俺は男性の看護師や医者がくると暴れたそうだ。
覚えていないけど。
とにかく触られると暴れて嫌がって、最終的に全て女性のスタッフになっていた。
でも、今。
ニノに触られてるのは、イヤじゃなかった。
「部屋、いこ?」
ニノが俺の手を引いて階段を上がっていく。
寮の部屋は二階で。
日当たりの良い角部屋だった。
ニノが鍵を開けてくれて、中に入った。
俺の荷物が入ったカバンが届いていた。
「これね、勝手に上がらせてもらって、俺が取ってきたんだ…ごめんね?」
すごくバツが悪そうな顔をして、ニノが謝った。
「ああ…むしろ…ありがとな…」
そういうと、驚いた顔をした。