第5章 レイヴンscene2
翔の肩が震える。
リビングの一面の壁の鏡が俺たちを映していた。
涙がとめどなく溢れる翔と、しがみつく俺。
翔がまたうつむいて泣いたかと思うと、身体に回した俺の手に、自分の手を重ねた。
「雅紀…俺、そんなことされたら…」
言葉が続かない。
翔の静かな嗚咽を聞きながら、それでも俺はその先を聞きたい。
「されたら…?」
「奪いたくなる…」
その時の翔の、妖しい目の光。
鏡に写った、恍惚とした顔。
俺は目が離せない。
窓の外には、横浜の港がきらきらと俺たちを見ている。
「雅紀…」
翔の手が、俺の腕を伝って髪を弄ぶ。
「抱いて…」
俺の髪に顔をすりつけたかと思うと、自らバスローブを床に落とした。
「俺のいうこと、聞いてくれるんでしょ…?」
俺の耳を痛いほど噛んだ。
「…今夜は、離さないで」
翔の唇が、俺に触れる。
触れた場所から、鳥肌がたった。
翔が俺に本気になった。
それは、得も言われぬ快感。
「奪ってみろよ…俺を…」
そう言って俺は翔の首筋に噛みつく。
「あっ…雅紀っ…」
甘く俺を呼ぶ声に、俺の理性は吹っ飛んでいった。