第5章 レイヴンscene2
翔が驚いた顔をして振り向いた。
「うん…ちょっとね、今日お酒飲み過ぎちゃって…実家に泊まるから」
潤の寂しそうな声が聞こえるけど、俺の視線は翔から外せなくて。
驚いた顔から、泣き顔に変わっていく。
「ごめんね…潤」
とうとう翔はうつむいてしまった。
涙を腕で拭っている。
「愛してる」
残酷なことをしているのはわかってる。
でも翔の望みを叶えるためには…
仕方のないことだ
通話を切っても、翔はその場から動かない。
「うっ…えっ…えっ…」
小さな泣き声を上げながら、たったひとりで声を震わせて泣いている。
「翔…おいで?」
翔は首を横に振る。
「帰れよ…」
「翔…」
「潤の元へ帰れよっ…!」
そのまま部屋を飛び出そうとするから、追いかけて抱きしめた。
「離せよっ…!お前が帰らないなら、俺が帰るっ…」
「翔っ…!落ち着けよ」
「やだっ…俺は…雅紀にそんなことさせたかったわけじゃないっ…」
「翔っ…俺はっ…お前が好きだよ」
ぎゅっと腕に力を入れる。
「俺が決めたんだ。翔が言ったからじゃない。俺がそうしたいんだ…」
翔の頑なな身体は、鎧を纏ったように俺を拒絶する。
「翔…俺と、一緒にいて…?」